アルコール染料インクを用いた平面図像(絵画)を表現手段とし、作品と空間と見る者の関係を探っている。
自分の制作は、写真から得た図像を元に自分の手を通して綿布の上に色彩のインクの点を置いてゆく。最後に、時間をかけて溶かしインクを動かすことで、色彩の点は混ざり合い、移動の痕跡や滲みを綿布に残す。そのようにして、作品の図像を制作する。
 それらをホワイトキューブを前提とした壁面展示の絵画形式シリーズと、自然光を図像に反映させ空間と作品をダイレクトに結びつけたシリーズ(具体的には布を宙吊りにした形式やアクリルボックスに綿布を張り透過光で図像を見せる形式)の2つの展示形式で作品展開している。

 作品は、部分である色彩性と、それらの集合としてある全体像、この両者のゆらぎによって成立している。作品に近付くことで、色彩を見つけたり、インクの滲みから”単なる綿布=モノ”であることを意識するかもしれない。また、距離をとることで、全体の像に自らの経験から何かのイメージを見出すかもしれない。
 何ものでもない色彩と何かであることとの緊張関係の中で、作品・空間・見る者、それぞれが相対的な関係となり相互作用するような絵画を目指している。

 例えば、僕は幼いころ喘息のため、よく夜中に眠れないことがあった。
 一晩中つけっぱなしにしたテレビを夜が明けるまで眺めている。しだいに遠くにあるはずのテレビ画面は色彩の点の集合として目の前いっぱいに迫ってくる。そこに内容はなく、ただブラウン管を通した意味のない映像が時間の感覚もなく、延々と浮かび続けていた。その間、自分の主観から離れ、ただただ目の前の視覚を受け入れるだけのような存在になる。
 今思い返すと、そのときの感覚はとてもリアリティのある感覚だったように思う。今作品でやろうとしていることは、きっとこのようなコトも内包されたものなのだろう。

2014.6 藤永覚耶

 
 
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